こんにちは、頑固オヤジ店主 久保です!

9月になったとたんに台風が勢力を増している2020年9月。温暖化で海水温度が高くなったことで台風も過去に例を見ないほど大型になっているみたいで、沖縄、九州から西日本にかけて 雨量も半端ないようですね、、、ここ数日で関東、東京も雨の日が増えそうです~。梅雨時期もそうですが、ゲリラ豪雨が増える 8月、9月の台風シーズンも 外出の際に持ち物が濡れてしまうのが気になります。特に、お気に入りの革製品、バッグや革財布、中でもヌメ革の財布なんかは「水に濡れたらどうしよう~!!」と心配になる方も多いはず。ということで、今回のブログでは「ヌメ革にとって「水」は天敵?」と題してお届けしたいと思います。

ヌメ革にとって、「水」は悪なのか

そもそもヌメ革にとって、「水」というものは悪なんでしょうか?インターネット上で調べてみると、よく「ヌメ革は水に弱い」というような説明が見られます。ある意味ではわかるんですけどねぇ、、、でも、自分はそうは思いませんっ!(あばれる君かっ) ヌメ革は水に弱い、という訳ではないし 水が全て、ヌメ革にとって悪、という訳ではないんですよ。 水の付き方、そのあとの処置の仕方によって、水によるヌメ革に及ぼす影響が 悪く働くことがある、ということだと思います。その理由を詳しく見ていきましょう。

革細工では水をよく使う

うちのお店で人気の手作りの革財布。中でも化粧をしていない(染色、加工されていない天然に最も近い状態の)ヌメ革を使ってオーダーメイドで作ることがほとんどで、すべて手作業でお作りしているんです。革財布を作る工程の中で かなりよく出てくるのが、水を使った作業。ヌメ革の革細工では本当によく 水を使うんですよ。

ヌメ革財布制作で水を使う工程

それでは具体的に、ヌメ革財布の制作で水を使う工程をご紹介したいと思います。

その1~刻印を入れる工程

まずはヌメ革に刻印を入れる、という工程です。ヌメ革は水につけると形状を記憶する性質があります。その性質を利用して、お店のロゴを刻印したり、お客様のお名前、メッセージを名入れ刻印したりするときには 必ず、刻印を入れる面に ハケで水を塗って湿らせた状態で刻印をします。

水で濡らした状態で刻印すると、このぐらいしっかり刻印が入るんですよ。

その2~コバ磨きの工程

はい、次に革財布制作の中でもかなり重要な工程、コバ磨き。このコバ磨きの工程でも 水を使って磨く、というのは絶対に外せない作業なんです!!ヤスリで整えたコバに水を塗って 濡らしているところ。

濡らしたコバを麻布でひたすら磨く。

すると、ツルツルっとしたコバに仕上がるんです。水がないと、この状態のコバに仕上げることなんかできないんですよ!マジで!!

その3~レザーカービングでの全工程

革財布を作る、という工程の中ではちょっと特殊な技術ですが、レザーカービングという、革に彫刻していく、という技法があるんですが、このレザーカービングにおいては、ほとんどすべての工程で ヌメ革を水に濡らした状態で行っていくんです。ハケで財布本体のヌメ革全面に水を塗って 湿らせているところ。

ヌメ革を湿らせた状態で スーベルカッターを使ってカッティングを入れているところです。これは本筋彫りしているところなんですが、下絵を鉄筆で入れる段階でも、革を濡らさないと しっかり入らないし、この後の工程、ベベラやその他装飾のカービングでも 必ず水で湿らせた状態でしか 作業ができないんです。そのぐらいカービング作業では「水でヌメ革を濡らす」ということは欠かせないんです。

ここで見てきたように、ヌメ革の財布を作るには 水で濡らす、ということが非常に重要だ、ということがお分かりいただけると思います。水がないと いい革財布は生まれない、という訳なんです。

ヌメ革財布で「水」に気を付けるポイント

とはいうものの、ヌメ革の財布をじゃんじゃん水につけていいですよ、と言っているわけではないんです。水が悪い影響を及ぼす、ということももちろんあるので、ヌメ革財布で「水」に気を付けるべきポイントをご紹介していきましょう。まずはこちらをご覧ください。

札入れ部分のトコノール加工

うちのお店でお作りしているヌメ革財布。すべて一枚革仕立てで作っているので、市販の革財布のように財布の内側、裏地にナイロンを貼ったりせずに ヌメ革だけで勝負しています。ただ革の裏側、トコ面というのは革の繊維がむき出しでガサガサしています。この状態だと、お札の出し入れがスムーズにできないので、革のトコ面にトコノールという薬剤を塗って磨く、という作業をします。

トコノールを塗って、乾いた状態でガラス板でこすって磨きます。

そうすると、革の裏側がツルッとした状態になって、お札がスムーズに出し入れできるようになるんです。

この2層の札入れ部分のトコ面には全てトコノール磨きをしています。

トコノールは水分が入るとべたべたしてくる

札入れをスムースにするべく、塗ったトコノールですが、これが水と相性が良くないんです。トコノールは水分が入るとべたべたしてくるんですよ。以前お客様からこんなご相談がありました。

男性のお客様
以前こちらで作ってもらった財布、毎日愛用しているんですが、最近 札とか領収書がべたっと張り付いて出し入れがしにくい感じになっているんですが、なんとかなりますか?

送っていいただいて、お使いの革財布を確認したところ、財布全体がかび臭いようなにおいがあり、お客様に確認したところ

男性のお客様
仕事柄 水を使う仕事で、作業着のポケットに財布を入れっぱなしで仕事をしていた

とのこと、財布全体に水分が入りっぱなしの状態で トコノールが緩くなり、札などにべたつきが出てしまった、という状態だったんです。やっぱりこの状態では、ヌメ革の財布にはよくありません。濡れてしまったのはしょうがないですが、濡れたら 濡れたまま放置しないようにしましょう!

革財布全体が濡れてしまった時の対処法

革財布が全体的に濡れてしまい、湿った状態になってしまった、そんな時の対処法がこちら。まずは財布の中身を取り出して、札入れ部分、カードポケット部分など隙間に新聞紙など吸水性のある紙を入れて、風通しのいい場所に陰干しをしましょう。湿ったら ちゃんと乾燥してあげる、というのが大切です。トコノールのべたつき、財布全体のかび臭さ、などはこれで防ぐことができます。

この話のまとめ

さあ、「ヌメ革にとって「水」は天敵?」いかがでしたか?よく言われるように、ヌメ革にとって水は絶対に避けるべき、というわけではなく、むしろいいヌメ革の製品には水を使うことはマストということがお分かりいただけたと思います。ヌメ革の財布を愛用するのに、水を恐れる必要はありません!水に濡れてしまっても、そのあとにしっかりと乾燥させてあげる、という対処さえしてあげればいいんです。気軽にヌメ革を楽しむ、一つの知恵としてご参考いただけると嬉しいです♪

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

それではまた♪